経済産業省は2026年6月29日、日本発の「アバター」に関する国際規格「ISO/IEC 24216-1:2026」の発行を発表した。本規格はメタバースやXRにおける仮想の身体であるアバターを介した体験全般において、用語の定義、デザインや機能の考え方、身体所有感覚や倫理的観点からのインターフェース設計における考慮事項などを整理するものだ。ファイルフォーマットの標準化だけを対象にしたものではなく、ユーザーが安心してサービスを利用できる環境全体の整備を目指す。産業技術総合研究所(産総研)内の検討委員会が原案を開発した。本稿では規格策定の経緯と、委員として参加したVTuber・バーチャル美少女ねむのコメント「日本発でアバターを規格化する意義」を掲載する。
経済産業省発表:日本発の「アバター」に関する国際規格が発行されました
以下、2026年6月29日に経済産業省が公式サイトに掲載した内容を引用する。
1.背景
近年、メタバース、XR(VR・AR・MR)の普及に加え、現実空間と連動した体験を提供するロケーションベースドエンターテイメント(LBE)などの拡大に伴い、アバターはサイバー空間におけるユーザの「身体」として、人と人、人とサービスをつなぐ中核的なインターフェースとして重要性が増しています。
その活用分野も、エンターテインメントにとどまらず、遠隔会議、教育、コミュニケーションなど、多岐に広がっています。こうした利用拡大に伴い、アバターの設計や表現のあり方に対する要求も高度化・多様化しています。
しかし、アバターの外観、機能、表現方法、利用上の配慮事項などを説明するための国際的な共通ルールは十分に整備されておらず、利用者はサービスごとの違いを理解しにくく、事業者にとっても品質や特徴を国際的に説明することが難しい状況にありました。
そのため、世界的に高い評価を受けている日本のアニメスタイルのアバター文化についても、その特徴を国際的な枠組みの中で説明する手段が十分ではありませんでした。
こうした中、日本が中心となり、アバターに関する共通ルールを整理した国際規格ISO/IEC 24216-1:2026の開発が進められました。
2.規格の概要
本規格では、主に以下の事項を定めています。
(1)アバターの定義
(2)アバターのデザインおよび機能の分類
(3)身体リアリティの分類と評価
(4)倫理的社会的配慮事項
(5)アバター利用時の配慮事項
本規格は、国立研究開発法人産業技術総合研究所内に設置された拡張体験デザイン協会(DAAX)や、協会が運営する「アバター国際標準化の国内検討委員会」での業界関係者を交えた議論、学術研究、各国動向の国際比較調査等を踏まえて開発されました。その後、ISO/IEC JTC 1/SC 35(ユーザーインターフェース)において審議され、2026年5月に国際規格として発行されました。
3.期待される効果
本規格は、アバターの理解・設計・活用を共通化し、利用者から産業全体まで幅広い効果をもたらす基盤となるものです。
○利用者側
アバターの特徴や違いを理解しやすくなり、自分に合ったサービスを選択できるようになります。
○開発者・事業者側
共通の設計指針を活用できるため、開発効率の向上や品質向上、サービス内容の説明のしやすさが期待されます。また、異なるサービス間の連携や国際展開も進めやすくなります。
○産業全体
日本が強みを持つアニメスタイルのアバターを含めた日本発のコンテンツを国際的な共通認識で説明できることで、海外市場への展開を後押しします。さらに、エンターテイメントにとどまらず、教育、医療、観光、遠隔コミュニケーションなど幅広い分野での活用も期待されます。
※出典(経済産業省):日本発の「アバター」に関する国際規格が発行されました。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/is/20260629.html
産総研「アバター国際標準化の国内検討委員会」
以下、産業技術総合研究所(産総研)公式サイトの内容を引用する。
●本委員会の目的
メタバースやXRを利用した製品・コンテンツ・サービス等は、現実の自分の身体に変わる仮想の身体(アバター)を使って体験されます。そのため、どのような設計のアバターを利用したコンテンツやサービスであるかは、ユーザの体験に影響する重要な情報です。本委員会は、国際標準化委員会ISO IEC/JTC1/SC35における、ユーザインターフェースとしてのアバターの規格の開発が、よりユーザ側および開発側に有意義な規格となることを目指して、国内の業界やユーザの声を収集し、規格開発に提言やアドバイスを行うことを目的とした各分野各業界の専門家による委員会です。
●委員(五十音順)
岩城進之介 (VRMコンソーシアム/株式会社バーチャルキャスト)
大山潤爾 (産業技術総合研究所/筑波大学/SC35)
川本大功 (KDDI株式会社)
杉本麻樹 (慶応義塾大学/SC35)
武富貴史 (株式会社サイバーエージェント)
豊田啓介 (株式会社ノイズ/一般社団法人Metaverse Japan/東京大学)
仲田朝彦 (株式会社三越伊勢丹)
バーチャル美少女ねむ (有識者)
原田佑規 (京都先端科学大学/SC35)
平木剛史 (クラスター株式会社)
目黒慎吾 (博報堂DYホールディングス/拡張体験デザイン協会)
※出典(産業技術総合研究所):拡張体験デザイン協会 コンソーシアム
https://unit.aist.go.jp/rihsa/daax/d_cns_standardization.html
国際標準化機構(ISO):アバターに関する国際規格「ISO/IEC 24216-1:2026」
●規格番号:ISO/IEC 24216-1:2026
●規格名:Information technology — User interface requirements and guidelines on avatars — Part 1: General(情報技術 — アバターに関するユーザーインターフェースの指針 — 第1部:総則)
※出典(国際標準化機構):ISO/IEC 24216-1:2026 – Information technology — User interface requirements and guidelines on avatars — Part 1: General https://www.iso.org/standard/89280.html
バーチャル美少女ねむ委員コメント「日本発でアバターを規格化する意義」
以下、規格発行にあたってのバーチャル美少女ねむ委員のコメントを掲載する。
* * *
このたびアバターの国際規格を発行でき、とても嬉しく思っています。今回の規格の検討にあたり、私は「中の人」としてではなく、アバターとボイスチェンジャーを利用して、一人のVTuber・メタバース住人である仮想人格「バーチャル美少女ねむ」として委員会の会議に参加させて頂きました。このような不思議な存在を温かく迎えて頂いた委員と事務局の皆さんに心から感謝申し上げます。
「アバター」はメタバースにおける私たちの身体です。自分自身の存在を表現する「アイデンティティ」であり、他者との「コミュニケーションツール」であり、ファッションをはじめとした「経済を突き動かす要因」であり、他者や世界を感じるための「感覚器官」でもあります。
現在、世界中の様々なサービスで日本風のアニメ調アバターをはじめとした、多彩なアバター表現の利用が大きく広がっています。しかし、現状はプラットフォームによって使い勝手が大きく違ったり、他のプラットフォームにアバターを持ち込むのが難しかったり、様々な課題があります。
また、海外ではアバターを人体のフォトリアルな複製として捉えることに主眼が置かれがちで、日本では当たり前のアニメ的なデフォルメや漫画記号的な表現が見過されることも多いです。さらに一部欧米圏などでは「文化の盗用」が社会的な批判の対象にされやすいこともあり、メタバースでも物理現実と同じ性別・年齢・人種の姿でいるべきだといった「なりたい自分になれる権利」が大きく制限される風潮に向かってしまう懸念もありました。
そんななか、アバターの多様性について柔軟な価値観を育んできた日本から国際規格を発信できたことには大きな意義があります。アニメや漫画、ゲーム、VTuberといった文化は「人は現実の身体を超えて、自由な存在として生きられる」という感覚を、長年にわたって世界へ提示してきました。今回の規格はそういった価値観を尊重するものにできたのではないかと思います。さらなる発展の土台となることを期待しています。
今回の規格はあくまで第一弾であり、今後も委員会の議論は継続し、規格も拡張されていきます。一委員として、バーチャルな一存在として、自由なメタバースの未来のため、今後も全霊を尽くす所存です。
バーチャル美少女ねむ
* * *

(本委員会は非公開のため、この写真は内閣府「メタバース官民連携会議」のもの)
※出典(バーチャル美少女ねむのnote):日本発でアバターを規格化する意義
https://note.com/nemchan_nel/n/n5d03916edd95
VTuber/作家「バーチャル美少女ねむ」
VTuber/作家。「バーチャルでなりたい自分になる」をテーマに人類の進化を促すべく配信・執筆・調査活動を行っている。世界最古の個人系VTuberとして2017年にデビュー。メタバースの革命性を論じた著書『メタバース進化論(技術評論社)』で「ITエンジニア本大賞2023」を受賞。国連IGF登壇を始め、講演や大学講義の経験多数。2023年にはMoguLive VTuber Award 2023「今年最も輝いたVTuber」に選出。2025年にはForbes JAPAN「NEXT100:世界を救う希望」に選出されたほか、全国高専入試「国語」にも文章が採用された。
・X : https://x.com/nemchan_nel
・YouTube : https://www.youtube.com/nemchan_nel
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●英語論文「メタバースでのアイデンティティ」を国際出版(バーチャル美少女ねむ、リュドミラ・ブレディキナ、大山潤爾、2026)
本規格の発行について、産業技術総合研究所も公式サイトにて「次世代XRコンテンツ産業を規格が後押し」として発表した。規格に関連する論文として、2026年5月20日に国際出版された書籍に収録された『Identity in Metaverse(メタバースでのアイデンティティ)』が挙げられた。
・産総研:次世代XRコンテンツ産業を規格が後押し https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2026/pr20260629/pr20260629.html
本論文は、検討委員会のメンバーであるバーチャル美少女ねむ、大山潤爾、そしてスイスの人類学者リュドミラ・ブレディキナが執筆したもの。「ソーシャルVRライフスタイル調査」と題して実施したソーシャルVRユーザーの大規模調査データを元に、アバターがアイデンティティに与える影響を考察している。アバターにより新しいアイデンティティを獲得する「アイデンティティのコスプレ」の概念についても紹介している。
・VTuberがついに国際学術出版へ バーチャル美少女ねむ・ミラ・大山潤爾、IntechOpenで英語書籍を執筆 https://www.value-press.com/pressrelease/374681
●ソーシャルVRライフスタイル調査 (Nem x Mila)
バーチャル美少女ねむとリュドミラ・ブレディキナによる研究ユニット「Nem x Mila」がメタバース住人の生活実態を明らかにするため、全世界のユーザーを対象に定期的に実施している大規模公開アンケート調査。人類とメタバースの未来に向けたオープンな議論を活性化させるためレポ―トは全ページ無償公開されている。2023年に行われた第2回定量調査では回答数が約2,000件と過去最大になった。2024年に実施した定性調査では、産総研人間拡張研究センター(HARC)大山潤爾博士がスーパーバイザーとして協力している。
・メタバースでのアイデンティティ:ソーシャルVRライフスタイル調査2024 (Nem x Mila, 2024) https://note.com/nemchan_nel/n/n9a4ca9f667a2
●バーチャル美少女ねむ、全国高専入試「国語」に登場! 受験生に戸惑い広がる【メタバース進化論】
2026年2月8日に実施された国立高等専門学校(高専)の全国共通入学試験・国語において、バーチャル美少女ねむ の思想・哲学に関する設問が出題され、受験生の間で大きな話題となった。SNS上では『今年の高専入試イかれてる』『5度見した』『VTuberが出てきて興奮した』など、驚きの声が相次いでいる。設問テーマは、なぜ人はメタバースの中に「もう一人の私」を見出すのか。ねむが著書『メタバース進化論(技術評論社)』で提唱する、「メタバースでは複数の自分(分人)に姿形を与えることでより自己の本質に近づける」という思想が紹介された。さらにcluster代表取締役CEO・加藤直人、美学者・難波優輝の主張と比較して思考力・判断力を問う設問構成であった。ねむの著作は高専の授業でも取り扱われており、VRユーザーの多い高専との親和性や、今後の教育・研究分野への展開に期待する声も上がった。
・全国高専入試で「もう一人の私」を問う――VTuberバーチャル美少女ねむのメタバース分人哲学が出題され話題に https://www.value-press.com/pressrelease/369364
























